ua002

 

■解離性健忘

ブラックアウト及び時間喪失は、物質乱用あるいは器質的問題が無い場合は、折り紙つき!の病的な解離症状です。
ブラックアウト、健忘、時間喪失体験に本人が気がつく方法は主に二通りあります。

あるものは、自分がした証拠があるのに、した記憶の無いのを何度も思い返しては再確認します。
(たとえば、患者の思い出せないことをしていたと友人がその内容を話す。)

第二の場合では、患者は自体の最中に「はっと目覚め」りというか、「気がつく」が、どうやってここに来ているのかさっぱり(あるいはうっすらしか)、わかりません。

いずれの場合も、健忘は完全でなくてもいいのです。
「ブラックアウト」ならぬ「グレイアウト」。
また、はっきりしそうになっては消えるというダイナミックな場合もありえます。
ある時点で思い出せる情報量と、別の時点での情報量が違うことがあるからです。

*全ての精神科患者の精神状態検査には、時間喪失と遁走の有無をさぐる基礎的質問を入れるべきです。

■定義>300.12 解離性健忘(以前は心因性健忘

 

Dissociative Amnesia(formerly Psychogenic Amnesia)

 

  1. 優勢な障害は、重要な個人的情報で、通常外傷的またはストレスの強い性質を持つものの想起が不可能になり、それが余りにも広範囲にわたるため通常の物忘れでは説明できないような、1つまたはそれ以上のエピソードである。
  2. この障害は解離性同一性障害、解離性とん走、外傷後ストレス障害、急性ストレス障畏または身体化障害の経過中にのみ起こるものではなく、物質(例:乱用薬物、投薬)または神経疾患またはその他の一般身体疾患(例:頭部外傷による健忘性障害)の直接的な生理学的作用によるものでもない。
  3. その障害は、臨床的に著しい苦痛または、社会的、職業的、または他の重要な領域の機能における障害を引き起こしている。

健忘は解離性同一性障害などの解離性障害に特徴的です。
ぼーっとしているうちに、自分が何かをしていて、それを覚えていない、ということですね。

解離性同一性障害では、健忘の間に”別の人格が行動している”、と言う事がほとんどです。
例えばAという人に解離が起こり、その間にBと言う人格が行動します。
その間にBにAの事を質問しても答える事が出来ない、と言うことを、
重要な個人情報が通常の忘れっぽさでは説明できないほどに追想困難である」(DSM-Ⅳ)は指しています。
こうした健忘は解離によるものなのです。
解離による健忘は器質性の健忘と違って、一般知識や、日常生活動作に及ぶことは無いかわりに、
その人の生活史や家族歴のような個人情報ばかりが思い出せないという所に着眼すると違いがはっきりします。
健忘は、軽いトランス状態に伴うような軽度の物から、
反復的や持続的なものには失われる記憶量も大きく、
日常生活機能や同一性が障害されるものまで様々にあります。


■解離性遁走

遁走はもともと、逃げ出すこと、という意味を持っています。

解離性遁走とは、突然、不意に家や職場から遠くへ旅立ってしまい、過去を思い出すことができないのですが、気質性精神障害は存在しないものを言います。しばしば新しい同一性をよそおっています。この新しい同一性への記述にまとまった特徴はありません。
遁走状態での旅は、目的の無い彷徨の形をとることもありますが、たいていは合目的的であるようにみえますし、公共の交通手段を利用することがあってもおかしくありません。偶然見かけた人はその人の行動に何の奇妙な点をも認めないのが普通です。

実際に彼らはまったくせん妄状態にある人なのです。にもかかわらず、電車の切符を買い、食事をし、ホテルに泊まり、何人もの人と言葉を交わす。ちょっと変なようすだった、何かに没頭していて夢を見ているようだったなどと言われることもあるにはあるのですが、結局彼らがせん妄状態にある“おかしな感じの”人であるとは認められません。〔ピエール・ジャネ

遁走には、時間喪失中の位置移動があり、だから患者は、いたと言う記憶のある場所以外のどこかにいる自分に気づきます。
典型的な遁走状態の患者は、第一の自己(普段の状態)の記憶を持っていません。第一の自己の同一性を回復した時、代わりに遁走中の出来事についての健忘が生じることが多いのです。

→遁走エピソードは、様々な気質性精神障害例えば側頭葉てんかんや中毒あるいは中毒からの離脱状態においても生じえます。そのため、徹底的に内科的及び神経学的検査をしなければなりません。ただし、遁走は解離性同一性障害のありふれた症状でもあります。

■定義>300.13 解離性とん走(以前は心因性とん走)

Dissociatjve Fugue(formerly Psychogenic Fugue)

  1. 優勢な障害は、予期していないときに突然、家庭または普段の職場から離れて放浪し、過去を想起することができなくなる。
  2. 個人の同一性について混乱している、または新しい同一性を(部分的に、または完全に)装う。
  3. この障害は、解離性同一性障害の経過中にのみ起こるものではなく、物質(例:乱用薬物、投薬)または一般身体疾患(例:側頭葉てんかん)の直接的な生理学的作用によるものでもない。
  4. その障害は、臨床的に著しい苦痛または、社会的、職業的または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

■遁走の例

キャリーの場合(一過性の解離性遁走)

レジナルドの場合(頻繁な解離性遁走)

 


参考文献、サイト:[ 精神科治療学 第12巻 第10号 p1147-1157 田中究 (1997年10月) ]
[解離-若年期における病理と治療- : フランク・W・パトナム]
[多重人格障害-その診断と治療- : フランク・W・パトナム]
Szondian