この記事は治療の進め方(統合の場合:前編)の続きです。

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「人格統合の条件」

■C―――失われた記憶の処理

交代人格を意識に出す以上に大切な事は、欠落した記憶を取り戻す事にありました。
患者の記憶の連続性をチェックし、記憶が抜けた部分はセラピーの焦点にしました。
欠落した記憶を見つけるために、協力的な人格に相談し、彼らから可能な限りの情報を集めました。
そのプロセスは、考古学の遺跡の発掘に似ているかもしれません。先住の住民や古文書から遺跡の情報を集めて、そのあたりを掘るのです。
一度で成功する事は無く、何度か挑戦するうちに本物の遺跡を発見します。

失われた記憶もこのようにして見つかりました。

意識に現れた記憶は当時の状況をそのまま再現してくれます。
記憶の復活は単なる忘れた事を思い出す作業ではなく、古代の遺跡と同じく、過去を再現するのです。
失われた記憶は単独で存在するよりも、隠れた交代人格が抱えている場合が多くあります。
記憶の復活は、隠れた交代人格を発見する事でもありました。

新しい人格がみつかると、患者の欠落した記憶が見つかり、クロスワードパズルのようにかけた部分が埋まっていきます。
特に、虐待の記憶を持つ人格が見つかると、患者は初めて自分の児童虐待の過去に気づくことになります。
この場合、患者は虐待を生々しく再体験して、アブリアクション(抑圧された感情の処理)があります。
患者たちは、過去の体験を悲しみ、泣き、怒る。
患者は鬱状態がひどくなる時期がありますが、それを過ぎると、虐待体験を自分の中に取り入れる—再認識する—時期が来ます。
このプロセスの繰り返しが患者の改善につながります。

しかし、ここで強調すべきは、セラピストが記憶の復活をあせるべきではない事です。
準備ができていない段階で、虐待の記憶を復活させると、それ自体がトラウマとなり、患者は苦痛だけを受けて改善は望めません。

虐待の記憶を復活させる準備とは、患者がセラピストと信頼関係を築き、セラピストの感情的サポートを感じられる状態を意味します。
この準備段階をクリアーしていなければ、セラピストは記憶の復活を試みるべきではありません。
しかし、これは治療上のジレンマとなります。
DID(解離性同一性障害)者が人を信じられず、感情的な絆もサポートも受けられないのは、彼らに共通する問題だからです。


■D―――人格統合

人格統合は状況が整うと自然に発生する現象です。
その状況とは、
①交代人格同士の葛藤が最小限になり、お互いに認め合う
②患者が主要なトラウマの記憶を取り戻している
③患者がトラウマを自分の体験として再認識できていること
です
この条件が整うと、人格統合が自然に発生するか、交代人格から言い始めてきた。
したがって、セラピーはこの三つの状態を強化する方向に進んでいきます。

交代人格たちは、「人格統合」の意味をよく理解しており、治療の初期の段階でも、人格統合について話し合うことができます。
交代人格の葛藤を解決するには、できるだけ多くの交代人格と話をする必要があります。
著者(服部雄一氏)はまだ完全な人格統合に成功していないけれども、経験から判断すると、人格統合は段階を追ってゆけば、やがて到達されるゴールだと思います。


■E―――人格統合後のセラピー

人格統合した解離性同一性障害者は、
①人格統合のメンテナンス
②一人の人間として新しい生活に適応するためのセラピー
が必要だと言われています。

著者(服部雄一氏)はまだ人格統合に成功していないので、この段階まで来ていないけれども、現時点で判断すると、患者は以下のいずれかの問題のために、心理療法を必要とします。

  • 虐待される人間関係を形成する傾向があるので、これを修正すること。
  • 自尊心の確立
  • 人間不信の回復
  • 自分の子供を虐待しないための教育
  • 健全な結婚生活に入るためのカウンセリング
  • 恋人あるいは夫の教育
  • セックスの恐怖心の克服
  • 健全な性の喜びの回復
  • 経済的な自立

これ以上に問題があるかもしれませんが、現時点ではこれだけしか思いつきません。
将来に症例が増えれば、日本のDID疾患者の具体的な問題がもっと理解されると思います。
日本でも人格統合後の、システム化された心理療法は決して不可能ではないはずです。


まとめ

いかがでしたでしょうか。

治療を目指すお医者様にも、DIDの方と触れ合う方にも、参考になるものだと思います。

私は、私の中の人と話し合い、治療契約書を作るよう、医師に頼もうと思っています。
あー、プリンタがあったらな。印刷できないよう…(涙)(私語)
また、私が勉強するうちに、参考になりそうなものが出てきたら、加えていく予定です。


参考文献:多重人格者の真実 服部雄一
Special Thanks :inyotti