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子どもへの同性の親の怒りへの恐怖(不安)が「抑圧」をもたらし、意識から追い払われて忘れられることについては、防衛機制:抑圧と転移で説明しました。それはジャネによって明快に定義された「解離」による健忘とはどう違うのでしょうか。

岩波国語辞典、第四版によれば、忘却は単に「忘れ去る事」と書かれているだけですが、健忘には「忘れっぽい事」とあって、「~症」の語が挿入され、「記憶力が減退し、忘れっぽくなる病気・病状」と説明されています。なるほど、「解離」で生じるのは記憶の生理に障害が起こること、つまり病理なのです。抑圧の多くは適応現象ですが、解離は多くの場合すぐに変だとわかる病理現象なのです。

 「抑圧」の対象となる体験が無意識化されるには、抑制と言う意識現象(より明確に言えば努力と言う意)があるのに対し、「解離」は体験の瞬間に生じて意志作用が及ばないといえそうです。言い換えれば、抑圧はきちんと記憶されたものについて行われますが、解離は記憶のされかたそのものが、通常の記憶とは違うのです。

こうした記憶の回想を抑制し、無意識へと追いやる作業に無理が伴うものであれば、患者の人生は、身体症状への転換を伴う病的なもの(特定不能の解離性障害参照、古い言い方ではヒステリー)になるのです。フロイトが「ヒステリー患者は憶い出を病む」(『ヒステリー研究』)と言ったのは、こうした意味でした。


参考文献:封印された叫び 斉藤学